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PROJECT STORY

津松阪港津地区(阿漕浦・御殿場)堤防(改良)本体工事

2021.07 取材

PROLOGUE

地震・台風から命を守る堤防整備人と自然に優しい設計で美観をつくる

この町で生活する人々の安全な暮らしを守り続けてきた津地区の海岸堤防は、すでに40年以上も昔に築造したもので、老朽化によって地盤沈下や空洞化などの傷みが生じていました。この先起こりうる大地震への備えとして、津地区御殿場海岸の堤防約219mの改修工事を私たちが担当しました。
多くの人でにぎわう人気スポットでの工事のポイントを、実際に工事を担当した社員から語ってもらいます。

MEMBER

  • 中部支店工事部 工事担当
    2018年入社
    田村 夢有人

STORY

100年先を見据えた堤防整備工事地震や津波から暮らしを守る

津松阪港海岸は伊勢湾西岸に位置する風光明媚な海岸です。毎年シーズンになると、潮干狩りや海水浴などのレクリエーションに活用されるなど、近隣に住む方たちの暮らしの一部として親しまれています。そこでは海の家も10軒近く軒を連ねていました。

かつてこの海岸堤防が整備されたのは1960年代のこと。すでに堤防は老朽化し、経年劣化による地盤沈下や空洞化がところどころ見られていたため、抜本的に改修を行う海岸保全施設整備事業が発足。その事業に私たちは手をあげました。

この事業の目的は3点あります。まず老朽化への対応として堤防を改良すること。次に大地震への備えとして液状化対策を実施すること。そして海水浴や潮干狩りなどを今まで通りに楽しめる環境づくりと、自然環境に配慮した海岸整備をすること。

堤防としての機能を向上させ、美観を守るために、撤去工事、仮設工事、土工事、地盤改良工事、本体工事を実施しました。

近隣住民の理解を得ながら進めた工期短縮と生活環境保全

この工事は、2019年4月25日に契約完了し、2020年7月31日に竣工する1年5か月にわたるプロジェクトです。防波堤を解体して、約219mの防波堤を築造するスケジュールとしては短く、通常の進行では間に合わないことは明確でした。そのため、普段は順を追ってする工事でも同時並行できるものはまとめたり、作業車両と一般車両の通行を時間帯によって切り分けたりするなど、安全確保をしたうえで、工事を止めないこと、そして工期短縮することに挑みました。

また、人がたくさん集まる場所での工事は、騒音や粉塵への配慮は欠かせません。コンクリートの解体工事や地盤改良工事の杭打ちには、徹底して振動・騒音の抑制に努めた工法を導入しています。

「私たちがいくら気を遣っても、少なからず工事音は出てしまいます。ご迷惑をかけていたにも関わらず、工事が終わったときに海の家の方たちから“ありがとう”と言ってもらえたときは嬉しかったですね」と工事担当の田村は振り返ります。普段から挨拶をしたり、住民説明会やワークショップなども重ねたりしたからこそ実現できたコミュニケーションも成功のポイントだといえるでしょう。

人と自然に配慮した地域住民の憩いの場が完成

本工事の難所のひとつは、アーチ形の堤防工事でした。

「このとき私は入社3年目で、カーブを描くコンクリート打設工事は初めての経験でした。型枠を組むときの加工にもコツが要りますし、コンクリート打設においても膨張や伸縮があるので注意が必要です。この先100年残る景観のために、ミリ単位での管理に気を遣いました」と田村は話します。

こうやって私たちの技術力や対応力を結集した堤防工事は、工期・品質ともに予定通りに竣工。砂浜へのアプローチには、バリアフリーのスロープも設置し、より多くの人が楽しめる海岸へと生まれ変わりました

「コンクリート構造物は、少なくとも自分が生きているうちは残ります。責任が重い仕事ですが、何十年か経って、ふと自分が作ったものを見に来られるのは、この現場に限らず建設業に携わる喜びの一つです」。

TECHNOLOGY&SDGs

古い堤防で使ったコンクリートは再利用

現在、建築業界では国土交通省が推進する「建設リサイクル」という概念のもと、省資源・資源循環の取り組みに力を入れています。本工事でも既存の堤防で使っていたコンクリートは再生資材として、新しい構造物に利用する再生砕石として利用しました。

WORK FLOW

  • 2019年4月

    契約

  • 2019年6月

    工事着工

  • 2020年7月

    竣工

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